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トピックとお知らせ

「識字って、何だろう」 第19回ラオスのこども勉強会報告 

講師:小荒井理恵さん
      <ユネスコアジア文化センター(ACCU) プログラム・スペシャリスト>
    ラオスのこども勉強会チーム

●ラオスでの識字についての調査から
 ルアンパバンの村で74人に聞き取り。10~20代はほぼ全員読み書きができ、30代以上は6割台で、習った場所は小学校の他に、40代以上ではお寺が多い。読めないという人は、日常生活では自分の子どもやまわりの人に聞く。病院や役所などに用事で町に出たときは困るといった声が多かった。

●アフガニスタンでの女子・女性のための識字活動から
 識字プログラムに取り組む小荒井さんの発表。アフガニスタンで読み書きができる15歳以上の女性は12.5%。学校に行けない理由は、学校の未整備、家庭の貧困や紛争のほか、女の先生がいないために小学校5年生に進級できない女子の例がある。10歳以上の女の子は成熟した大人とされ、男性は家の中で守りたい、外に出したくないと考える。一方、羊の世話などで学校に行かない男子が多い地域もある。
 文字が読めるようになりたい理由は、薬局、病院で困らないように、携帯電話の数字、文字を使えるように、戦乱後に隣国から帰還して母語が読めるように、自分の子どもの勉強を手助けしたい、コーランが読めるようになりたい、など。
 識字率は、「あなたは読み書きができますか?」の問いに「はい」と答えた人の数で算出され、どの程度読み書きできるのかは、わからない。では、何をもって識字とするか。小荒井さんは、その人が読み書きできるようになって何をしたいのか、個人個人が定義する識字を大事にしたいと考えている。

 識字は、「読める・読めない」の二項対立ではなく、名前が書ける、何の薬が分かる、書類に記入ができる、など多様なレベルがある。「識字の連続性」として国際的にとらえられてはいるが、実際に人々の識字の状況の評価を行うのは資金面などから難しい。現状の識字の調査からは、個人の「こうなりたい」を満たしているかどうかはわからない。
 ある男性は、医師の書いた病室番号のメモを妻が読んだことに感銘を受け、妻にもっと勉強するようにと言うようになった。ある女性は、女性は学習する権利があることを自覚するようになった。
 アフガニスタンの教育省識字局は、識字教室で教育がしっかりと行われているか、成果が出ているのかを職員がチェックしている。小荒井さんはJICAの専門家として、チェックの用紙やテストを一緒に作ったり、職員の能力向上のために助言をしたり、議論がうまく進むために進行役を務めたりしている。識字教育を進める上で今後の課題として、教育を受けた女性が少ない中で、どうやって識字の女性の先生を育てていくのか、外に出にくい女の子にどうやって識字教育を届けるのか。女性に学ぶ権利があることをどう伝えるか、男性の意識にどう働きかけるか、などがある。

●「ラオスのこども」の読書推進活動
絵本、紙芝居、むかしばなしなどおはなしの楽しみや読書活動、ラオスの伝統的なスーン(詠唱)や口承を取り入れた活動を、動画を交えながら説明。例えば、マザーグースのお話をもとに日本の紙芝居作家やべみつのりさんが作った『これはジャックのたてた家』を、ラオスの作家が韻をふむラオス語に翻訳。これを先生の研修で演じた動画を紹介した。
http://www.youtube.com/watch?v=sy3HTi0ol0o

●Q&A
Q アフガニスタンの男性は、女性を自立させたくない、男性優位を壊したくない?
小荒井 そういう考え方はあるが、そればかりでなく、女性が意思決定に加わる例もあるし、女の子に教育を受けさせたい親もいる。モスクで男女が一緒に学んでいる識字教室もある。モスクで教育の大切さを説かれた男性が、女性への教育の必要を理解するということも大事。

Q 自分は読み書きできなくていいと思っている女子・女性に対してはどうする?
小荒井 男性を通じて、その娘、妻に働きかけたり、近所の教育を受けた人で良い結果がいると、自分も、そうなりたいと思ったりする。
 女の子自身が学びたいと思っていないとしたら、なぜなのか、どうしたら学校に行きたくなるのか、夢は何か、など小さなことから地域で取り組むことが必要。そのための人材が大事。
 同世代の刺激も大きい。学校に行っている子が家で教えたりする。

Q 「識字」の達成とは? 成果をどう測る?
小荒井 文字が使えるようになって、子どもを栄養状態よく育てられるとか、達成目標はさまざまだが、その関連性を図るのが難しい。
 プロジェクト実施前と後で同じテストをしたり、学習者自身の学習前後の思いの変化を聞き取るなどがある。

Q 識字能力を高めることで何を期待する?
小荒井 識字の取り組みは、それだけで独立しているのではなく、保健衛生や職業訓練とも関連し、また、収入向上の成果がすぐに表れるわけではない。何を目的にするのかは、とても重要だが、結局は参加する人が何をしたいのか、だろう。それを話し合いながら、識字活動に結びつけられるのがいい。


●意見交換
― ラオスでは、字は読めても、何が書いてあるかわからないという場面に出会うことが多い。村のお知らせで、紙に「予防接種、マラリヤの薬を取りに来て下さい」とあり、読めるけれど内容を理解していない。口で言うと、ああそうかと理解する。これは何?
― 先生向けのセミナーで、校長が本のタイトルと著者がわからないこともある。
― 本に親しんでいないという経験値の問題もある。それと、文字が読めることで獲得することは別のレベルで語ることではないか。
― 日本の特別支援教育の言語獲得プロセスの講義では、言葉と物と文字の3つをバランスがよくないと理解できない、としている。教師がそれをわからずに教えていると、読めるが、実際にはできない、ということになる。
― 日本の保育園で、「大きなかぶ」を、読むが如くにお話を始める子もいれば、新しい絵本を拾い読みする子もいる。意味は分かっていないと思うけれど、それを楽しいでいる時期もある。だから、読み聞かせは大事だと思う。
― ラオスでは、読むとき、「こんにちは」とつなげてではなく、「こ、ん、に、ち、は」と一音ずつになっている。
― ラオスの小学校では、子どもが音節ごとに読めるかどうかを先生がみている。5年生でも音節ごとに指でなぞりながら読ませている。「ラオスのこども」は学校を訪れ、「楽しく読もう」と呼びかけ、登場人物になりきって読むように働きかけている。
― 一方で、識字とは、国家が、この言語を、と定めたもの。定められなかった言語の話者は自分たちの言語を失うことにもつながる。私たちの口承文化に関わる活動について、さらにいろいろと考えられたらいいと思う。

以上、3部構成で、読み書きができるということはどういうことなのかを考える中で、その人が求めるものを大切にした識字、という視点が示されました。また、聞く、語る、読む、のつながりを見つめ、あらためて読み聞かせの大切さが見直されました。


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