トピックとお知らせ
絵本を授業に取り入れ、楽しい授業に
小学校における図書活用強化のための取組み
2009年9月から2010年9月まで、日本NGO連携無償資金協力を得て、当会では小学校における読書活動の定着と活性化をねらいとして、絵本や本を授業で副読本として取り入れるテクニックを指導し図書室の巡回指導を行う、図書活用強化に取り組みました。
<事業の内容>
ステップ@:図書活用強化セミナーの実施
図書室が設置されている小学校73校(6都県i)の教員146名(1校2名)を対象に、図書の授業への導入方法など、具体的な活用方法を伝えるセミナーAを行う。また、各県で、学校を巡回し指導法などを指導する県教育局教育担当官もセミナーに参加。セミナーは地域ごとに5回に分けて各3日間実施。本会が作成した「図書活用マニュアル」を使って指導。
加えて、セミナーを受けた教員が、すぐに実践できるよう、1校あたり6タイトル計180冊(1タイトル30冊ずつ)の教材用図書セットを対象校に配付。
図書セットの図書はすべてラオスで出版されたラオス語の本:
絵本「穴に落ちたヒヨコ」
絵本「少女ヌワンドーム」
絵本「ソンポーンの小さいあひる」 こちらを参照
絵本「ぼくはどこへいくの?」 こちらを参照
翻訳本「私たちの世界」
翻訳本「楽しい動物の話」
このセミナーのねらいは、授業に絵本や本を副読本として導入することで、読書の機会を増やし、読書の習慣の定着を促すこと。同時に、算数や理科に比べ、おろそかにされがちなラオス語の授業に多様なテクニックを取入れ、子どもの思考・発言を促し、生徒主体の授業づくりをできるようにすること。
左:絵本を手に取るセミナー参加者 (ボリカムサイ県) 右:模擬授業の計画を話し合うセミナー参加者 (ヴィエンチャン県)
ステップA:学校図書室巡回指導
対象校を訪問し、図書室運営・貸出サービス、授業での活用法について指導を行う。各学校の状況に合わせたアドバイスすると共に、新しい図書の補充も行う。(地理的な条件や時間の都合により、全ての対象校を訪問することは困難である為、比較的訪問しやすい位置にある46校で巡回指導を行う。)
巡回指導で学校図書室を訪問 (ヴィエンチャン県)
ステップB:フォローアップ研修・評価
セミナーや巡回指導の中で、意欲のある教員を発掘し、それらの教員15名を集めて、3日間のフォローアップ研修を行う。それぞれの学校で培った、絵本の活用法や図書室運営に関するアイディアを交換し、図書の活用状況のよいモデル校への訪問、教員同士のネットワーク作りを行う。
左:フォローアップ研修で子ども達と共に歌にあわせて踊る研修参加者(サイヤブリ県) 右:フォローアップ研修の参加者に選ばれた活発な読書活動を実施している教員は、代理参加者を除き全員女性。
<成果と課題>
・対象とした73校は、当会が1995年から2008年に図書室を開設した小学校の一部。過去に開設した図書室を巡回し、活用状況や課題を把握できたことは、当会にとっては大きな成果だった。
・先生からは、絵本を授業に取り入れると、普段落ちこぼれの生徒が積極的に授業に参加するようになった、という感想が聞かれた。これは、絵本を導入すると同時に、子どもの思考や発言を促すテクニックを先生が身につけている結果と言える。
・ステップBのフォローアップ研修で、図書活動に熱心に取り組む先生を一堂に集め、意見交換をし、モデル校を見学したことで、先生同士の横のつながりができ、仲間がいることを実感し、また今後の活動のための刺激となった。
・46校を巡回する中、ステップ@の指導内容は、一部の対象校にとってはレベルが高すぎたこともわかった。開設後、年数が経過している学校では、担当教員の転勤などで図書室の基本的な運営方法(図書の管理や貸出しサービス)が受け継がれておらず、図書室運営に関する基礎的な指導を、より必要としていた。
・当会の講師がセミナーで伝えたテクニックは、教育省が策定するカリキュラムの中で採用されているものではないので、授業で利用するかどうかは先生次第である。カリキュラム外の教材や指導法では、義務ではないため、「やらなくてもいいこと」と捉えられ、実践されないケースがある。
巡回訪問の際に集めた各学校図書室の情報を集積、整理し、今後の当会の活動全般に生かしていく予定です。また、この取り組みで見えてきた課題を改善し、今回の事業で対象としていない中学校や他県の小学校に対しても、読書活動の定着と活性化のために、同様の働きかけをしていくことを検討しています。
(報告:ラオス駐在スタッフ 秋元波)
脚注:
i:対象地域6都県:サイヤブリ県、ルアンナムター県、ルアンパバン県、ヴィエンチャン県、ボリカムサイ県、ヴィエンチャン都
A:指導法は教員養成校教員対象の「ラオス語教授法改善セミナー」と同じ。詳細はhttp://deknoylao.org/news/topic_200906.htmを参照。